アジャイル開発が失敗する原因は?デメリットや向き不向き、成功のためのポイントも解説

アジャイル開発は、ウォーターフォール開発と並ぶシステム開発の代表的な手法の1つで、近年注目されている開発手法の一つです。

小規模な開発とリリースを繰り返しながらユーザーからのフィードバックを開発に反映させていき、より良質なプロダクトを開発することを目指します。

アジャイル開発は成功率が高い開発手法とされていますが、一方で失敗するケースも数多くあります。

本記事では、アジャイル開発が失敗する原因やどのような開発に向いているか、成功のためのポイントについて解説します。

目次

アジャイル開発の成功率はどの程度?

アジャイル開発の成功率は、ウォーターフォール開発の約3倍と言われています。

アジャイル開発は、小規模な開発とリリースを繰り返していくことで、改善点を早期に発見し素早く修正することができます。

このため、品質の向上やコスト削減につながりプロジェクトの成功率が高くなるとされています。

実際、The Standish Groupが2015年に発表した「Chaos Report-2015」によると、大小のプロジェクト全てを合わせた場合、アジャイル開発の成功率はウォーターフォール開発を上回っています。

具体的には、アジャイル開発の成功率は39%であり、一方でウォーターフォール開発の成功率は11%と、約3.5倍の差があります。

また、アジャイル開発の失敗率は9%である一方、ウォーターフォール開発の失敗率は29%であり、アジャイル開発の方が失敗率も1/3以下になっています。

つまり、このレポートからはアジャイル開発がウォーターフォール開発に比べて、成功率が高く失敗率が低い開発手法であることが示されています。

アジャイル開発に含まれるいくつかの手法

成功率が高く、品質の向上やコスト削減を図れるアジャイル開発にはいくつかの手法があります。

以下ではその中で代表的な3つの手法について記載していきます。

スクラム

アジャイル開発のフレームワークの中でも特によく知られているのが「スクラム」です。

スクラムとは、最大10人のチームが1ヶ月以内の「スプリント」と呼ばれる開発サイクルで繰り返し開発を行う手法です。

スクラムではメンバーが自己組織化して、スプリントごとに目標となる成果物やタスクを明確にして開発を進めていきます。

自己組織化することで開発チーム全体が同じ目標に向かって協力することができ、より効率的な開発が可能となるため多くの企業で採用されています。

また、スクラムマスターという重要な役割があり、メンバー間の調整や問題解決のサポートをすることでチーム全体の生産性を高めます。

そのため、スクラムマスターは、アジャイルとスクラムに精通しているメンバーやスクラムの経験があるメンバーが担わないと、スクラムを成功させることが難しくなるところには注意が必要です。

XP

XPとはExtreme Programing(エクストリームプログラミング)の略で、品質の高い製品を早期にリリースすることを目的としている手法です。

Extreme(急進的な)という言葉通り、コードレビューや単体テスト、結合テスト、顧客とのコミュニケーションなどを積極的に行い、品質の高い製品を迅速にリリースすることを目指します。

XPは、仕様変更が発生することを開発初期の段階から念頭においており、最初からプロジェクト全体の細かい計画は立てません。

イテレーションと呼ばれる短い開発工程の中で開発・リリースを繰り返していくことで、仕様変更にも迅速に対応できる上、コストを最小限に抑えることができます。

また、短い開発工程を進めていく中でクライアントとコミュニケーションを密に取っていくことで、クライアントの要望を反映させやすくクライアントの満足度を高めることができます。

このように、XPはクライアントのニーズに合わせた開発を実現する手法としても注目されています。

アジャイル開発には、さまざまな手法がありますが、XPは特に効率的な開発を目指す企業にとっては魅力的な手法と言えるでしょう。

ただし、XPを実践するには、高度のコミュニケーション能力や技術力が求められるため、熟練の開発チームが必要となる点は注意が必要です。

FDD

FDDはFeature Driven Development(ユーザー機能駆動開発)の略であり、その名前の通り「機能」を中心に開発を進める手法です。

具体的には、ユーザーが求める機能を基に開発チームを分け、機能単位で開発・リリースを行います。

ユーザーにとって価値のある機能を中心に開発を進めることができるため、ユーザーの満足度を高めることができます。

また、機能単位でのチーム分けやリリースを行うことで、開発の進捗状況を可視化しやすくなり、プロジェクト全体の進捗管理がしやすくなります。

FDDでは、開発の初めにプロジェクト全体の設計を行い、その後に個々の機能の詳細な設計を進めます。

開発の初めにプロジェクト全体の設計を行うことで、開発チーム全体が一定の目標に向かって進んでいくことができ、開発の遅延や認識の齟齬を防ぐことができます。

このようにFDDは大規模なプロジェクトにも適した手法とされています。

アジャイル開発が失敗する4つの原因

発注側と開発側のコミュニケーションが不足している

アジャイル開発では発注側と開発側のコミュニケーションが必要不可欠です。

発注側と開発側がコミュニケーションを取ることで、進捗管理やプロダクトの品質維持をしています。

そのため、コミュニケーションが不足していると、要件定義や優先順位の決定が遅れたり、発注側と開発側との認識に相違が生じてしまい、開発が失敗してしまう恐れがあります。

PMやリーダーとなる人が役割を果たせていない

アジャイル開発チームには、PM(プロジェクトマネージャー)やリーダーが必要です。

スクラムではスクラムマスターが該当します。

彼らはチーム全体をまとめて、スケジュールや品質管理、発注側とのコミュニケーションの確保などを担当します。

そのため、必要なスキルや経験が不足している場合は、的確な指示や行動ができずプロジェクト全体が混乱してしまい失敗につながる恐れがあります。

PMやリーダーを選任する際には、適したスキルや経験があるかをしっかり確認することが重要です。

コストとのバランスが取れない

アジャイル開発を行う際にはコストとのバランスを取ることが重要になります。

アジャイル開発では、短い期間で成果物をリリースすることが求められますが、そのためには開発チームの人員確保や技術力、インフラ整備などが必要です。

また、仕様変更に対応しやすいとはいえ、仕様変更が繰り返されると開発スケジュールが伸び、予算が増えることになります。

アジャイル開発を行う場合には、開発に必要なリソースを十分に確保することや仕様変更の度合いを把握し、プロジェクトの進捗と予算の管理をしっかり行うことが求められます。

アジャイル開発の経験・知識が不足している

アジャイル開発は、ウォーターフォール開発とは異なる開発手法です。

上述した通り、小規模な開発とリリースを繰り返しながらユーザーからのフィードバックを開発に反映させていく手法です。

そのため、仕様変更が多いアジャイル開発は開発難易度が高くなりやすく、チームがアジャイル開発の手法やプロセスを正しく理解できていない場合は、プロジェクトを上手く進まられなくなることがあります。

アジャイル開発を行う際には、アジャイル開発のノウハウを身につけたメンバー、もしくは実践的な経験を積んだメンバーが必要となります。

アジャイル開発を失敗させないためにできること

アジャイル開発の本質を理解する

アジャイル開発には「アジャイル宣言の背後にある原則」という原則が存在しています。

これらの原則を正しく理解せず、仕様変更に対応しやすいというだけでアジャイル開発を取り入れると大半は開発に失敗するでしょう。

アジャイル開発を成功させるためには、開発側だけでなく発注側も含めて、開発に関わる全てのメンバーがこの原則を理解することが必要です。

発注側は開発側に丸投げしない

「アジャイル宣言の背後にある原則」の1つに「ビジネス側の人と開発者は、プロジェクトを通して日々一緒に働かなければなりません。」とあります。

ここではビジネス側=発注側と置き換えて考えます。

アジャイル開発において、開発チームは短い期間で機能をリリースすることを目的としています。

その目的を達成するためには、発注側と開発チームが密にコミュニケーションを取り合うことで、プロジェクト全体の状況を共有することが必要です。

発注側が案件を開発チームに丸投げしてしまうと、ビジネスの領域に関しては開発チーム側だけでは決められませんし、プロジェクトの進捗状況を正しく把握できないため、開発が失敗する可能性が高くなります。

アジャイル開発の向き不向きを踏まえたうえで採用する

アジャイル開発は、製品開発においての柔軟性や素早い製品リリースを実現するために開発された手法です。

しかし、アジャイル開発が全てのプロジェクトに向いているわけではありません。

一般的には以下のようなプロジェクトがアジャイル開発に向いていると言われています。

・プロジェクトの要件が不明確で、仕様変更が起こりうる場合

・ユーザーからのフィードバックを取り入れながら開発を進めたい場合

・発注側が開発に積極的に関与できる場合

一方で、以下のようなプロジェクトはアジャイル開発には向かないと言われています。

・プロジェクトの要件が確定しており、途中の仕様変更が発生しない場合

・メンバーの技術力が低く、仕様変更への適宜対応が難しい場合

・発注側は開発に関して開発チームに一任したい場合

アジャイル開発を採用する前に、プロジェクトの特性や目的に合わせて、アジャイル開発が適しているかどうかを検討する必要があります。

アジャイル開発を適切に活用することで、より効率的な開発を実現し、プロジェクトの成功につなげることができます。

まとめ|アジャイル開発の本質を理解して失敗を防ごう

アジャイル開発は、柔軟性や素早い製品リリースを実現するために開発された手法ですが、全てのプロジェクトに適しているわけではありません。

プロジェクトの特性や目的に合わせて、アジャイル開発が適しているかどうかを検討する必要があります。

アジャイル開発を取り入れる際には、開発に関わるメンバー全員が「アジャイル宣言の背後にある原則」を理解する必要があります。

また、それに加えて「アジャイル開発が失敗する原因」や「失敗させないためにできること」を理解することや、スクラムやXP、FDDなどの手法から適切なものを選択することが重要です。

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