ベンダーロックインの対策は何をすべき?陥った際の解消法もあわせて解説!
ベンダーロックインを回避するにはどうすれば良いか悩まれる方も多いかもしれません。
ベンダーロックインに陥ると発注側は不利な状態となるため、できれば避けたいと考えるものです。
そこでこの記事では、ベンダーロックインの回避策と解消策、官公庁での実情も解説しています。早めに対策を講じておきたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ベンダーロックインとは
ベンダーロックインとは、あるベンダーの製品やサービスに依存してしまい、他のベンダーに切り替えることが困難になる状態のことです。ベンダーロックインのデメリットとしては、コストが高くなりやすい・ベンダーの言いなりになりやすい・技術革新が遅れるなどが挙げられます。一方で、自社の業務への深い理解を得られることから、より最適なソリューションを提供してもらえるというメリットもあります。
できれば避けたいものですが、ベンダーロックインに陥る企業や自治体は少なくありません。2021年に発足したデジタル庁ですら既存ベンダーへの依存が強いと指摘されており、ベンダーロックインはさまざまな場所で生じているのです。
ベンダーロックインについて、詳しくはこちらの記事で解説しています。
ベンダーロックインの現状〜予防策を官公庁の例から学ぶ〜
ベンダーロックインはコスト高騰など様々な問題を生じるうえ、競争の低下も引き起こしかねません。そのため、特に官公庁では、公共性や透明性の観点から、ベンダーロックインの回避が望まれます。
そこで、公正取引委員会は、官公庁を対象としたベンダーロックインに関する調査を実施し、2022年に結果が報告されました。すると、約99%の官公庁が既存ベンダーと再度契約することとなった事実(ベンダーロックインに陥っている)が判明したのです。再度契約してしまった原因としては主に以下の事由が挙げられました。
- 既存ベンダーしか既存システムの機能を詳細に把握できないから
- 既存システムの技術に係る権利が既存ベンダーに帰属していたから
- 既存ベンダーしか既存システムに保存したデータ内容を把握できないから
一方で官公庁でもベンダーロックイン防止のための取り組みもされています。調査結果のうち多かったものは以下の通りです。
- ベンダーから設計書などの情報提供を求める
- 不必要な一括発注をしない
- 情報システム担当者を配置する
しかしある程度の対策を講じていても、特に官公庁では、その発注に適したベンダーの選定が難しいという声も少なくありません。独占禁止法の観点からも、マッチングの仕組みを整備する必要があるなど、まだまだ課題が多いと言えます。
ベンダーロックインは、官公庁だけでなく、民間企業や個人でも起こり得る問題です。今回の調査結果から学び、ベンダーとの関係を見直して自由な選択肢を確保し、より良い製品やサービスを利用しましょう。
ベンダーロックインを回避するための対策
ベンダーロックインに陥ると抜け出すのは難しいものです。そこで、まずはベンダーロックインを回避するためにできる対策を紹介します。
複数のベンダーから提案を受ける
ベンダーを選ぶ際には1社だけに依頼せず、複数のベンダーから提案を受けることが重要です。それぞれのベンダーの強みや弱み、価格や納期、サポート体制などを比較検討することで、自社のニーズに最適なベンダーを見つけられるでしょう。
また、ベンダー側もより良いサービスを提供しようと競争原理が働くことも期待できます。
オープンソースを利用する
オープンソースとは、ソフトウェアのソースコードが公開されており、誰でも自由に利用や改変ができるものを指します。特定の技術への依存はベンダーロックインに陥る原因となるため、オープンソースの活用は有効な回避策でしょう。
また、オープンソースは多くの開発者やユーザーにより常に改善されているため、品質やセキュリティも高く、プラグインにより機能が追加できる場合も多くあります。
ただし、サポートが十分に受けられないことやライセンスの条件に準拠する必要があるため、活用する際は注意してください。
複数社に分散して発注する
1つのプロジェクトやシステムを構築する際に、全てを1社のベンダーに任せるのではなく、複数社に分散して発注することも有効な対策です。
例えば、機能ごとに別々のベンダーに依頼し、APIで連携して構築する「マイクロサービスアーキテクチャ」という技法もあります。一見複雑に感じるかもしれませんが、機能ごとに最適なベンダーを選定して発注でき、以下のようなメリットもあります。
- 拡張性が高い
- トラブルの際の影響を最小限にできる
- 開発期間を短縮できる
また、設計や開発をベンダーに依頼し、テストや保守は自社で行うというように、役割分担を明確にするのも良いでしょう。
こういった対策により、1社のベンダーが独占的な立場にならず、他社への切り替えも容易になります。また、複数社のベンダーからフィードバックやアイデアを得ることで、プロジェクトやシステムの質も向上する可能性があります。
担当者を配置する
ベンダーとの関係を管理するためには、自社にベンダーコントロールの担当者を配置することが重要です。
担当者は、ベンダーとの契約や納品、サポートなどのやり取りを行い、ベンダーのパフォーマンスや満足度を評価します。また、自社のニーズや要望をベンダーに伝えるとともに、ベンダーからの提案や情報を受け取ることもあるでしょう。
このように専任の担当者を配置することで、ベンダーとのコミュニケーションを円滑にし、ベンダーロックインの予防だけでなく、信頼関係を築くことができます。
著作権に留意した契約書を交わす
ベンダーとの契約書には、著作権に関する条項が含まれることもあります。
そもそも著作権とは、ソフトウェアやコンテンツなどの創作物に対する権利のことで、原則として創作者に帰属します。つまり、ベンダーが作成したソフトウェアやコンテンツは、ベンダーに著作権があるということです。このようにベンダーに著作権がある場合、他のベンダーに移行を検討する際に度々問題となります。
よくある例として、ベンダーが提供したソフトウェアやコンテンツを自由に改変や再利用ができないケースが挙げられます。そのため、ベンダーとの契約書を交わす際には、著作権に関する条項をよく確認し、自社の利益を守りましょう。
ベンダーロックインに陥ってしまった場合の解消法
すでに特定のベンダーと長く付き合い、ベンダーロックインの状態に陥っている場合もあるかと思います。そこで、ベンダーロックインを脱却するためにできることを原因別に紹介します。
仕様やドキュメントが原因の場合
ベンダーが独自の仕様やフォーマットを採用していたり、ドキュメントが不十分だったりすることで、他のベンダーとの互換性がなくなりベンダーロックインに陥る場合があります。このような場合は、以下のような解消法が考えられます。
- 標準化された仕様やフォーマットに移行する
- ドキュメントを整備する(システムの設計や運用方法、データの構造などを明確に記述することで、他のベンダーに引き継ぐ際に必要な情報を提供可能)
著作権や契約内容が原因の場合
ベンダーに著作権が帰属すると、ライセンス料やシステム改変の面でベンダーの移行が困難になる場合があります。また契約において、長期的な継続を義務付けたり、解約や変更に高額な違約金を設定したりするケースもあるようです。このような場合は、以下のような解消法が考えられます。
- 著作権法や契約条項を確認する(著作権法上の制限事項や契約上の解約条件などを確認することで、他のベンダーに移行する際に発生する費用やリスクを把握できる)
- 代替サービスを検討する(同等またはそれ以上の品質を持つ別のサービスを探すことで、他のベンダーに切り替える際に必要な調整を最小限にできる)
- ベンダーと交渉する(ライセンス料の値下げや著作権の放棄などを求めることで、他のベンダーに切り替える際に発生する費用やリスクを軽減できる)
- 契約期間や更新条件を見直す(一例として契約期間を短くすることが挙げられる)
まとめ|ベンダーロックイン対策を講じておこう
ベンダーロックインはコストなどの面で不利となるため、できれば避けたいものです。
しかし多くの官公庁をはじめ、自治体・民間問わずベンダーの移行が困難となる事態に陥っています。
こういった状況を避けるためには、まずはベンダーロックインを回避するために対策しておくことが重要です。より良いサービスを利用するためにも、その発注に適したベンダーを選定する必要があります。
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