初めてでも書ける!システム開発のRFPの書き方をサンプル文付きで解説
システム開発において、ベンダーから自社にとって最適な提案を受けるためには「RFP(Request for Proposal)」の存在が欠かせません。
一方、IT業界の経験が浅い方や非エンジニアの方は「RFPってなに?案件定義とどう違うの?書き方は?」など多数の疑問を抱くでしょう。
事業成功を目指すためには、自社が抱える課題を解決できるシステムをベンダーに提案してもらう必要があります。そこで今回は、初めてでも書けるRFPの書き方を解説します。
システム開発におけるRFPを書く目的と要件定義との違い
RFPは「Request for Proposal」の略称で、日本語では「提案依頼書」と訳されます。自社の課題を解決できるシステム開発をベンダーやslerなどに提案してもらうために、依頼主側が作成・提出する文書です。
依頼者は、RFPを複数の検討中ベンダーに提出します。そして、ベンダーはRFPをもとに「課題を解決できるシステムの開発」「サービスや予算」などを提案し、依頼主は提案内容をもとに発注するベンダーを選定するのです。
極論、RFPがなくてもシステム開発は依頼できます。しかしRFPを用いないと、課題や重視すべきポイントなどのすり合わせが十分にできず、納得のいくシステムを納品してもらえないといった事態を招きます。
【RFPを通して共有すること】
- 依頼主が求めること
- ベンダー側が提案、開発したいこと
上記によって、自社の課題解決につながるシステム開発が可能となります。RFPを作成したあとの、会社(ベンダー)選考のフローは以下のとおりです。
- ベンダーとの質疑応答
- PMP(プロジェクトマネージメント計画書)案の作成
- 評価基準の策定
- 提案書の受領
- 商談を進めるベンダーを3社ほどに絞り込む(社内プレゼンで選定)
- RFI(情報提供依頼書)の提出と回答の受領
- ベンダーによるプレゼンテーションの実施
- ベンダーの決定・通知
ベンダーから質問を受けたときは、全社へ回答を共有するのが理想的です。そうすることで、効率的に自社の希望や認識を伝えられます。
また、提案書の受領(RFPの回答)までは最低でも2週間〜3週間の期間を設けましょう。十分な時間を確保することで、ベンダー側から十分な回答を得られるようになります。
ちなみに、RFP(提案依頼書)と似た言葉として「要件定義」があります。要件定義とは、システム開発における機能要件や非機能要件など、後の工程で必要となる情報が記載された書類です。
【RFPと要件定義の目的】
- RFP:依頼者側が、自社の課題を解決するシステム開発を担う適切なベンダーを選定するため
- 要件定義:ベンダー側が、システム開発における仕様を明確にして依頼者との認識のすり合わせを行うため
またRFPが依頼前(ベンダー選定時)に必要な書類である一方、要件定義はプロジェクト開始後(ベンダー決定後)に作成・提出する書類となります。
RFPの目次・構成
RFPを構成する基本的な項目は以下のとおりです。
大項目 | 小項目 |
はじめに | – |
会社概要 | ・概要と事業内容・組織 |
プロジェクト概要 | ・背景や現状の課題・システム化の目的・目標 |
システム化方針 | ・現行システムの全体図と利用状況・現行システムの主要課題・新システム化方針 など |
要求事項(機能・非機能・その他) | ・機能:現行業務の全体図、想定する機能など・非機能:セキュリティ、保守運用など・その他:業務改善、定着化など |
契約事項 | ・体制・作業場所・費用負担 など |
提案依頼内容 | ・対象範囲・提案を希望する内容 |
今後のスケジュール | ・プロジェクトのスタート日程・RFPの回答期日・選考フロー など |
参考資料 | 必要に応じて |
上記の流れを把握しておくことで、以下で解説する「RFPの具体的な書き方」を理解しやすくなります。
RFPの目的は「自社の課題を解決するシステムを開発してくれるベンダーの選定」ひいては「事業の成功」です。
自社が抱えている課題はなにか、システム開発によってどのような結果を望むのか、課題解決において提案してほしい内容やサービスはなにか、などを盛り込みましょう。
RFPの書き方〜サンプル文も〜
RFPの書き方を、サンプル文を交えて解説します。初めてRFPを作成する人でも、以下を真似るだけで基準を満たしたRFPをつくれます。
RFPの書き出しは「はじめに」の項目です。最初に強調しておきたいことや機密情報がある場合は、当項目に記載しておきましょう。
【サンプル文〜はじめに〜】
弊社Webサイトリニューアルに際し、皆様より、本依頼書に基づいた具体的なご提案を希望しております。 今回提供させていただきます提案依頼書には、貴社のご提供システムやサービス内容をご提案いただく際の参考になるよう、弊社の現状・要望等を記載しております。 また各社におかれましては、事前もしくは今後、取り交わさせていただきます「秘密保持契約書」(NDA)に基づいた慎重なお取扱いをお願い致します。 |
次に「プロジェクト概要」の項目では、Webサイトリニューアルに至った背景や現状の課題などを記載します。抱えているビジネス課題やシステム化の目的によって、解決手段が異なるケースがあるためです。
また新規ビジネスの場合は「ビジネス自体」の概要説明も必要です。
【サンプル文〜プロジェクト概要〜】
弊社が運営しているWebサイトは、情報更新のみ行っているものの、製品やサービス紹介などのページがほとんど更新されていないのが現状です。 そのため、弊社が重要視すべき営業内容とのズレが生じております。 また弊社の事業戦略にWebサイトの取り組みが適合していなくなっていることから「◯◯サービス」の認知度・集客向上を優先順位の高い取り組みと定めました。 上記を踏まえ、本リニューアルではターゲット層向けの情報提供ができるWebサイトの開発・運営を第一に考えております。 |
上記に加えて「第一優先の次くらいに求めていること」「伝えておいたほうがよい要望」などを追記しておくのもよいでしょう。
「システム化方針」の項目では、主に以下の内容を記載します。
- 現行システムの全体図と利用状況
- 現行システムの主要課題
- 新システム化方針
【サンプル文〜システム化方針〜】
現行システムは〇〇を採用しており、利用者は〇〇、利用支社は〇〇です。現行システムはリニューアル後も継続を想定しております。 ただし、現状はHTMLが分からないと更新ができないため、内部で対応する際は一部の利用者のみで行う必要があり、こちらの課題も解決できればと考えております。 |
そして、RFPの中で最重要項目である「要求事項」では、機能・非機能・その他などの機能要件についても明記します。
【サンプル文〜要求事項〜】
本プロジェクトにおける構築対象となるシステムでは、以下の機能の実装を想定しております。 ・機能:売上管理・引合見積管理・出荷管理・受注管理 ・非機能:バックアップ・セキュリティ・保守運用 ・その他:業務改善と定着・マスタ管理・テスト また弊社ではクラウド化を推進しております点もご考慮ください。 |
「契約事項」は、特別な方針がある場合に記載します。作業体制や費用負担(本プロジェクトの予実記載も)などをあらかじめ共有しておくことで、後々のトラブル回避につながります。
「提案依頼内容」の項目では、主に対象範囲と提案を希望する内容について記載しましょう。
【サンプル文〜提案依頼内容〜】
コーポレートサイト(https://www.◯◯.co.jp/) 200ページ 広告用LP(https://www.〇〇.co.jp/) 5ページ 会員サイト (https://www.〇〇.co.jp/)はリニューアル対象外となります。 また、ご提案をいただく際には以下の項目に留意いただけますようお願い申し上げます。 ・企業情報 ・サービス内容 ・成果物(納品物)一覧 ・オプション提案(集客におけるSEOや広告など) |
【サンプル文〜今後のスケジュール】
今後の選考スケジュールを以下に記載いたします。 1:オリエンテーション:〇〇年◯月◯日 場所〇〇 2:質疑応答:〇〇年◯月◯日◯時 ※質問方法と回答期限も記載 3:提案書提出:〇〇年◯月◯日◯時必着 4:一次審査(書類):〇〇年◯月◯日〜〇〇年◯月◯日 5:二次審査(プレゼンテーション):〇〇年◯月◯日〜〇〇年◯月◯日 6:最終採否通知:〇〇年◯月◯日(予定) |
初めてRFPを作成する人は、上記を参考にしてみてください。
RFPに関するよくある失敗
RFPに関するよくある失敗は以下のとおりです。
- 細かい要望を記載しなかった結果、各社の提案がばらばらになった
- メインの目的以外の要望を詰め込みすぎて、最終的なゴールが定まらないRFPになってしまった
- 重要な承認事項をスケジュールに組み込んでおらず、大幅な手直しが生じたとき、スケジュールとコストを見直さなければいけなくなった
- 事前確認・共有が徹底できておらず、プロジェクト開始後に導入予定だったCMSが自社サーバーにインストールできなかった
- 費用やサービス内容のすり合わせが不十分だったために、のちに必要となる資料やデータを納品物として受け取っていなかった
RFPは、要望を詰め込みすぎても幅をもたせすぎても納得のいく提案をもらえません。最重要視すべき「自社が解決したい課題」を明確にして、誰が読んでも要望が理解できる文章を心がけましょう。
また、スケジュールの組み立てや事前共有の徹底も重要です。プロジェクトを円滑に進めるうえで「事前に確認しておくべきこと」を複数の意見から取り入れ、スケジュールやコストを無駄にしないようにしましょう。
上記の失敗は、それぞれを意識することで回避できます。RFPの失敗は最悪の場合、プロジェクトの延期などの要因となるため注意しましょう。
まとめ
RFPは、適切なベンダー選考に欠かせない書類の1つです。自社の課題解決を実現するシステムの開発を依頼できれば、システム開発にとどまらず事業成功にもつながります。
ただし、システム開発や事業の成功は、RFPの存在が全てではありません。依頼後のヒアリングをはじめ、理想的なシステムを開発するための各フローも重要です。
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