ベンダーロックインをわかりやすく解説!〜問題点と対策も〜

ベンダーロックイン

長期間にわたりシステム開発を外部のベンダーに発注していると、他のベンダーへの移行が難しくなることも少なくありません。このような状態をベンダーロックインと呼びます。

ベンダーロックインにより、自社にマッチした提案をしてもらいやすいなどのメリットはあるものの、見逃せないデメリットも多くできれば避けたいものです。

この記事ではベンダーロックインにより起こりうる問題や原因や対策について解説します。ベンダーについてお困り事がある企業の担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

目次

ベンダーロックインとは?

ベンダーロックインとは、特定のベンダーに依存した状態になり、他のベンダーの利用や移行が難しくなる状況を指します。

システム開発を行う場合、すべてを自社で内製するのはしばしば困難であり、外部のベンダーに依頼することも多々あるでしょう。外部ベンダーに発注することで高度な専門技術を活用でき、なおかつ自社のコア業務に注力できるメリットがあります。しかし中には、ベンダーロックインに陥る企業や自治体も少なくありません。2021年に発足したデジタル庁ですら既存ベンダーへの依存が強いと指摘されており、ベンダーロックインはさまざまな場所で生じているのです。

そんなベンダーロックインは「コーポレートロックイン」と「テクノロジー(クラウド)ロックイン」の2種類に大別されるため、以下でそれぞれ解説します。

コーポレートロックイン

コーポレートロックインとは、企業や自治体が特定のベンダーや契約に依存している状態を指します。

コーポレートロックインの状態では、自社の事業や業務などを十分理解してもらえ、コミュニケーションもスムーズにとれる場合が多いものです。このため、自社の状況や課題を踏まえた提案をしてもらえ、一見良い状態のように見えるかもしれません。

しかし、コーポレートロックインの状態では、何らかの理由により他のベンダーに移行しようと考えた時、難しくなることが多々あります。移行の際によくあるトラブル事例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 自社の業務などについて、一から理解してもらう必要がある
  • 現行のベンダーへ割いていたリソースなどを再度投資する必要がある
  • 信頼関係の構築に時間や労力がかかる
  • 契約内容・条件によっては、契約解除に高額な違約金などが発生する可能性がある

上記のように、コーポレートロックインはベンダーに依存するがゆえに起こる事象であり、さまざまな問題があることが分かります。

テクノロジー(クラウド)ロックイン

テクノロジー(クラウド)ロックインとは、特定の技術などに縛られて、他のベンダーに移行できない状態を指します。

そのベンダー独自の技術やデータ形式などを採用している場合や、独自のクラウドサービスを利用している場合、他のベンダーに乗り換えた際にデータを移行できないなどのトラブルが起きかねません。テクノロジーロックインに陥ると、事業の継続に影響を及ぼすため、問題があってもベンダーを乗り換えられない事態も起こりえます。

いずれのベンダーロックインの場合も、さまざまな問題が生じるため、できれば避けた方が良いでしょう。

ベンダーロックインの原因は?

ベンダーロックインの原因は多岐に渡ります。どれか1つで起こるというよりは、いくつかの要因が組み合わさって起きてしまうケースが多いようです。以下でよくある原因を解説します。

長期的な保守やシステムの複雑化

システムの長期的な保守は、特定のベンダーが提供する保守サービスに依存してしまいやすく、他のベンダーへの移行が難しくなります

また、システムが複雑化することで、後述する特定のベンダーの技術やプラットフォームに依存し、ベンダーロックインとなる可能性が高まります。

ドキュメントの不備

これまで使用してきたドキュメント(設計書など)に不備があると、ベンダーロックインに陥りやすくなります。具体的には以下のものが挙げられます。

  • システムの要件や機能
  • カスタマイズの手順
  • トラブルシューティング
  • アップグレードの手順

ドキュメントの不備により、ベンダーへの依存度を上げることになってしまいます。

ベンダー独自の技術によるシステム

特定のベンダー独自の技術・プロトコル・プラットフォームを使用している場合もベンダーロックインとなる可能性があります。

独自技術により導入が安価に済むこともありますが、他のベンダーの製品やサービスとの互換性がないことで移行が困難となりがちです。また、データの場合もほぼ同様で、特定の形式でデータが保存されていると、変換や整合性の問題から移行が困難となり、事業を中断せざるを得ない事態も起こりえます。

社内のエンジニア不足によるベンダー依存

自社のエンジニア不足によりベンダーロックインとなる可能性があります。

他のベンダーに移行するには、新たに開発リソースを確保する必要がありますが、エンジニア不足であればリソースの追加は困難です。

また、エンジニア不足により専門知識やスキルの面でベンダーへの依存度が高くなりやすいと言えます。

ベンダーロックインのデメリット

ベンダーロックインのデメリット・起こりうる困り事には以下のようなものが挙げられます。

  • 乗り換えが困難となる
  • ベンダーの言いなりになりやすい
  • コストが高くなりやすい
  • 古いシステムから変えられない可能性がある

以下でそれぞれ解説します。

乗り換えが困難となる

現行のベンダーから他のベンダーへ乗り換えが難しくなるのは、ベンダーロックインの最大のデメリットと言えます。

技術面で依存した状態になるため、既存のシステムとの互換性を確保するためには、多くの時間やコストが必要となるためです。

また、技術面以外では、新しい他のベンダーに自社の事業や業務に対して理解してもらうために時間や労力を要する点も問題と言えるでしょう。

ベンダーの言いなりになりやすい

ベンダーに技術面で依存した状態となることで、発注側はベンダーの言いなりになりやすくなってしまいます。

なぜなら発注者に技術の知識が十分にないと、ベンダーが提案する解決策や意見に頼りがちになってしまうためです。このような状態が続くと、発注側は交渉力をなくしてしまい要件や要望が通りにくくなってしまいます。ベンダー側がシステムを支配できるようになり、ベンダー有利な進み方をされかねません。

コストが高くなりやすい

前述した通り交渉が難しくなることで、コストも高くなりやすいものです。

開発・保守を特定のベンダーに継続して依頼し続けなければならない状況であると、ベンダー側が製品やサービスを一方的に値上げしても、事業の継続のために高額な費用も受け入れざるを得ません

他のベンダーへの移行が困難であれば価格交渉の余地は少なくなるため、コストの上昇も避けられないと言えるでしょう。

古いシステムから変えられない可能性がある

ベンダーを乗り換えできないがゆえに、古いシステムを使い続けなければならない事態が起こりえます。

古いシステムがそのベンダー独自の技術に基づいて構築されている場合、ベンダー移行の際に異なる技術やプラットフォームに対応するために大規模な再設計が必要となります

また、データ移行の問題もあり、特定のデータ形式や構造に依存していると、データの移行と互換性の確保が必要です。データの変換やマッピングに時間や労力がかかります。

ベンダーロックインのメリット

ベンダーロックインは一般的には好ましくない状態とされていますが、メリットとなる場合もあります。

業務プロセスへの深い理解を得られ、より自社に最適なソリューションを提供してもらえることは大きなメリットと言えます。また、長期的な付き合いにより特定のベンダーと付き合い続けることで自社の事業や業務への理解を十分にしてもらえ、頼りになる存在にもなるでしょう。

また、専門知識と技術的なサポートにより、IT全般の相談がしやすくなり、ひいては運用や人材育成のアドバイスも得られる場合もあります。

このように、自社にIT・技術に明るい人材がいなければメリットとなる場合もあります。

しかし、前述したデメリットの方が大きいため、ベンダーロックインは解消すべきです。

ベンダーロックインの解消方法

ベンダーロックインに陥っている場合、どのようにしたら良いのでしょうか。まずは原因を究明して、ドキュメントを整備するなどするのが有効なようです。

ベンダーロックインの原因を究明する

ベンダーロックインの対策は原因によって異なるため、まずは原因究明を行いましょう。

また、自社に担当者を配置することも効果的です。

担当者を配置することでマイグレーション(既存システムから新しいシステムに移行すること)もしやすくなります。会社によっては人的リソースの面で難しいかもしれませんが、一貫した取り組みができるため、可能であれば担当者を配置しましょう。

ドキュメントを整備する

ベンダーロックインの原因の一つでもあるドキュメントを整備することで、状況を改善できる可能性があります。

ドキュメントには設計書などが含まれているため、ベンダーを移行する際には最新状態にしておくことが重要です。どれが必要でどのようにメンテナンスするなど整備しておくことで、ベンダーが変わっても問題が生じにくくなります。

著作権について契約内容を確認する

現行ベンダーが開発したシステムは、契約書に特記がなければ著作権はベンダーに帰属します。ベンダーの移行を検討するのであれば、改修などに支障が出ないように著作権保持者の許諾を受けましょう

まとめ|ベンダーロックインから脱却しよう

ベンダーロックインとは、特定のベンダーに依存した状態になることを指します。他のベンダーに移行したいと思っても困難となったり、移行にかかる費用が高額になったりするデメリットがあるため、できれば避けたいものです

ベンダーロックインを解消するには、原因を究明したうえで個々の対策に当たる必要があります。

クリーヴァでは、SucSak(サクサク)という月額制でシステム開発のレンタルサービスを行っております。CTOレベルの技術者が専門的な相談にも応じることが可能です。ベンダーロックインに関してお困りのことがありましたら、下記のURLより弊社サービスをご覧いただき、お問い合わせください。

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